● The Weapons of Mass Discussion (大量長文兵器)

May 10, 2006

24 Hour Party Peopleって映画をご覧になった方ならTony Wilsonという人物の事は御存知でしょう。まだご覧になった事のない方の為に簡単に説明致しますと、このTony Wilson、80年代に興隆したマンチェスター・シーン (当時の狂気とさえいえるシーンの盛り上がりぶりはMad-chesterという新しいリミックス名詞まで生み出した程) を陰で支えた人物で、「楽曲の権利は全てアーティストにあり、レーベルは一切所有しない」という涙ぐましい理想主義を掲げ、Joy Division/New OrderやHappy Mondaysを輩出しつつも破産したFactory Records、そして現在のクラブ・シーンの雛形を築いたとさえいえるマンチェスターの伝説的クラブ、Haciendaの創始者でもあります。

このTony Wilson、ひたすら自分が溺愛するアートに全てを捧げる完全なパトロン体質の方で(そういう意味ではちょっとルードヴィッヒ王とかとも似ているかも。あそこまで精神的にイっちゃってる人ではないですが....)僕がこの業界に入るにあたり唯一心から尊敬し、心のグルとさえ言える人物なのですが、そんなTony Wilsonとなななななんと!LAのラジオ局とMUSEXPO 2006のパネルディスカッションでで出会う事が出来たのです(泪)。
兎に角この人、「歯に衣を着せない」という表現がぴったりの方。映画で描かれていたよりも実物の方が遥かに過激な人物なのです。もともとはテレビ番組の司会者で、こよなく愛する音楽関係の事業においては常時経済的に破綻している為、テレビの仕事の収入を全て音楽文化発展の為に使っているんですね。だから一般のイギリス人の方々にはむしろ「バラエティ番組やスポーツ中継の司会者」として知られていたりします。しかしロスに来る直前に大事な収入源であり司会を担当していた子供番組でF-wordをポロリと言ってしまい全国より苦情が殺到、番組を降ろされたと冗談交じりに言ってました。放送禁止用語に関しては英国や日本よりも厳しい「自由の国」米国のラヂヲ、という訳でDJの方もTony WIlsonとの生放送インタビュー中はドキドキしていましたね。

突然ですがここで「使える生きた英会話」

Lesson 1: 好き嫌いの表現(っつ〜か実質的には「喧嘩の売り事言葉」)

Tony Wilson氏にとって気に入らない人は:

He's a bloody "wanker" = (彼は一人の血だらけの"汁アウト野郎"です)

気に入っている人は:

He's a complete "twat" = (彼は一人の完全な"女性器野郎"です)

大好きな人は:

He's a total "cunt" = (彼はあらゆる意味で一人の"女性器野郎"です)

新出単語3つリピートして下さい:

"wanker"
"twat"
"cunt"
"wanker"
"twat"
"cunt"
"wanker"
"twat"
"cunt"
"wanker"
"twat"
"cunt"
"wanker"
"twat"
"cunt"

では皆さんもこの言葉を使って自分で文を作ってみましょう!

豆知識: ちなみにwankerというのはアメリカでは通じないのでラジオで使ってもOKなんだそうです!早速使ってみよう!

ラジオのインタヴューでは自分が面倒をみたバンドの中でも特にHappy Mondaysを「もの凄く過小評価されている」と熱く擁護していました。映画を観た方だったら御存知の通り、Happy Mondaysはレコーディングすると称してBarbadosに行ったもののFactory Recordsの制作費をドラッグ代等で大量に使い込んだ挙句、結局何も完成させられず、或る意味会社を破産に追い込んだ最大の責任者なのです。しかしTonyにとってそんな事はどうでも良くて唯一大事なのはメンバーのShaun Riderが”天才”であり、彼の才能が生かせるプラットフォームを作るのが自分の使命である、という点だけなんですね。口さがなく、絶対に心に無い事は言わない(だから敵も多い)人から出た言葉だけに重く、目頭が熱くなりました。

その数日後、世界のインディ系音楽の品評会、MUSEXPO 2006がLAのサンセット大通りにて開催され、その中の"The Weapons of Mass Discussion"と題されたパネル・ディスカッションで再びTony Wilson氏と出会う事が出来ました。ここでもTonyの毒舌は冴え渡り、パネラーの一人でアメリカ人のインディレーベル経営者がディスカッションの途中で会場から出て行ってしまうというかなり笑えるハプニングもありつつ、周りのパネラーではとてもついていけないインテリな論法と展開していました。印象に残った言葉は多々あれど、その中で特に面白かった下りを一つ;

ちょっと禅っぽいけどこの世で最も賢い言葉は"I don't know"というフレーズ

Shaun Riderに一度「フランス革命は正しかったか間違っていたか」と訊いた事がある

彼の答えは

「まだ結論を出すには早過ぎる」

音楽業界で僕が唯一信じているのは歌 (songs) だ。それ以外の事はどうでもいい

ただ信じているが確信はしていない

「確信」した瞬間から「誤解」は始まるんだ

24 Hour Party Peopleで僕が一番感動したシーンはHaciendaの最後の夜 - 結局The Second Summer of Loveの真っただ中の客はみなエクスタシーでキマッていて誰もドリンクを買わなかった為利益が全くなくこのHaciendaもまたFactory Recordsと同じ運命を辿り経営が破綻してしまったのです - クラブに集まった客にTonyが「今夜でこのクラブはおしまいだ。ここにあるターンテーブルやシンセその他の楽器はみんなで盗んでいってくれて結構!そして明日のマンチェスター・シーンに是非役立ててくれ!」というくだりです。

その後破産したFactory Recordsの屋上で「僕は経営者としては敗北者だ」とつぶやくと突然空から天使がやってきて「でもあなたのしたことが正しかったのは私たちが知っているわ」というのです。

僕の大好きなOscar Wildeは獄中記の最後にこう記しています;

もし誰かが「過去を変える事は出来ない」と言っても信じてはいけない

神々の目からすれば過去・現在・未来すべて同じなのだ

我々は人の目ではなく神々の目のみを気にして生きるよう努力すべきである

時間はリニアではない、とは物理学者からニューエイジ系の人まで唱えておりますが、賢者の言葉の本質はいつの世も同じだという事ですね。

最後にTony WilsonがThe Weapons of Mass Discussionで言っていた言葉をもうひとつ;

Do not spoil the drama for the sake of facts
(事実の為に物語を台無しにしてはいけない)

これは藝術作品を作る上でとても大事なポイントですよ、クリエイターの皆様!

追伸: MUSEXPO 2006はキャラフォーニアでの音楽業界エヴェント!という事で「トイレは正にPowder Roomなんだろうな」と思っていましたが、フタを開けてみると意外な程クリーンでした(Tonyはくだんのディスカッションで:「アメリカではみんなドラッグやっていてもあまりその事について話さない」との言っていました。この発言に出席していた米国人の多くが不快感をあらわにしていたのは言う迄もありません。)。っていうか今アメリカ合衆国全体で犯罪件数がもの凄く下がっているみたいで(別に違法薬物摂取が犯罪だとは個人的には思いませんが)今や過去50年で最低レベルらしいです。確かに道を歩いていても全然危険な感じはしませんし、ヨーロッパより遥かに皆ルールを守っているって感じはします。別にこれが良い事だとも悪い事だとも思いませんが.........

●晴〜れた空〜♪そ〜よぐ風〜♪

April 28, 2006

テレヴィ&ラジヲ業界地獄の最前線をトップギアで突っ走っているこの私。連日の激務の合間をぬって今週末からはロスで行われるMUSEXPO2006というグローバルな音楽業界人の集いに参加するインタアナショナルな私はホノルル経由でロス入りすべく出発直前迄仕事をこなしつつ4月27日木曜/友引、祖国を慌ただしく発ったのであった.......

なんて気色の悪い冗談はさておき(でも加州出張というのは本当)、いやいやいや「ワイハー」ですよ「ワ・イ・ハ・ア」。トランジットの間数時間ワイキキでチルアウトしちゃいました。ホント「こつこつやる奴ぁ、ごくろうさん!」てな感じです。

とりあえず生まれて初めてのワイハー、そして亜米利加我宗酷。入国の際はいきなり問答無用で指紋&写真を撮られました。「来客に対してこんな無礼な国は無い!會社の金だから来てやってるけど自腹じゃこんなとこ死んでもやだね」とPassport Controlの前で毒を吐き一緒にいた同僚のS女史にヒカれてしまいつつ、とりあえず事なきを得て到着ロビーへ。ドアも窓もない吹き抜けのロビーはさすが常夏の島。いやがおうにも南国ムードのベロシティは上がりますね。

そんなこんなでタクシーに乗ってホノルル市へ行き朝食をとったのですが、出て来る食べ物&飲物のサイズたるや現代版ガリバー旅行記の世界!これだけ必要以上の熱量を摂取していれば、そのありあまるエナジーで「世界の覇権を掌握する!」 - いや、スミマセン。言葉を注意深く選ぶと「ちょっとフリーダム・ファイターな気分?!」に駆り立てられてもおかしくはないな、と思いました。っつ〜か亜米利加人ってフィジカルな美に執拗に拘り、過食や高カロリーの食べ物を食べる事に対して世界の誰よりも大きな罪の意識を持っている人達だと思うんですが、そんな彼らの日常の食事のデフォルトがこれかと思うと正直胸が痛みます。自分の欲求と闘う程辛く、精神のチューニングを狂わすものってないですからね。あと亜米利加人って病原菌とかにとても敏感ですよね。僕がブッチギれた入国管理のところにも「咳をする時は必ず手を口にあてて」なんて書いてありましたし、公衆便所には必ず使い捨て便座カバーがあったり、なんか「死」を出来るだけ日常生活から遠ざけようという涙ぐましい努力が隅々に見てとれてホント面白いです。

食事をした後は世界で最も有名な人工の砂浜、ワイキキ・ビイチへ!「あしたのジョー」で初めてジョーがパンチ・ドランカーの症状をハッキリと見せたのもこのワイキキぢゃないですか(こんなの「あしたのジョーおたく」にしか分からないですよね)!でもしっかりとダイヤモンドヘッドをバックに記念撮影しちゃいましたヨ!
ワイキキって老いも若きも渾然一体となっているスポットです。洋物出会い系サイトのポップアップに出て来るような(メディアが定義するところの)完璧なスタイルを更に強調するような格好をして歩いているお姉さんの隣では鹿児島大根みたいなシェイプの老夫婦が「もうこれ以上焼けねえだろ!」って位シミだらけのワニのような肌を更に太陽に呈していたり、といった具合。でもそんな後者の2人でさえも40年前は世界が頭を垂れるような肉体美を所有していたのかもしれないのです。やはり「花は散るから美しい」のか.....

いずれにしても(「花は散るから美しい」なんてバカな事を考えてる僕も含めて)我々人間はDNAにプログラムされた性欲や食欲に折角立てた人生設計を常に掻き回され続けている有機的生命体です。おそらく同じ様にDNAに掻き乱された価値観が元々はただの湿地帯だったここワイキキをこんな人工の楽園に創り変えたとも言えなくもないでしょう。創造主(The Creator)のオリジナル・デザインをボツにし、更に「理想」に近づけるべくデザインし直した訳です。そしてその「理想的」人工楽園では哀も変わらす時間&遺伝のギャンブル演出による皮肉な物語が展開しているんだなとピーカン空の下、ワイハーの地ビールを飲みながら考えていました。