●北の国から - エピソード3: バルト海に浮かぶ月

November 13, 2006

11月8日

船旅と聞くだけで悪寒が走る僕 - 英国遊学時代、まだユーロスターなんぞなかった頃、渡仏といえば必ず船だったのですが、毎度お約束の如く船酔いに悩まされていて正にトラウマ状態なのです。そんな中フィンランドからバルト三国の一つであるエストニアの首都タリンへ行く為どうしても船を使わざるを得なくてとりあえず高速艇で一時間半の旅だったのですが結果は全く問題ナシ!何をそんなに悩んでいたんだろうと思った程。

タリン自体は本当にこじんまりとした可愛い街です。しかもステキなのが物価が安いだけではなく(日本やフィンランドの約半額)エストニア・クローンは日本円の丁度約壱拾分乃一なのでとりあえずゼロを足すだけで済むという解りやすさ!

といったところですね。実はナニゲにエストニアではホテルに缶詰状態で東京で編集されて送られて来たインタビュー音源のノイズ除去&EQ、そして字幕スーパー用の翻訳の仕事をしていたので旧市街の散歩 & The Museum of Occupationに行った以外残念ながら何も悪い事はしていないんですよね〜。ホテルが町外れの港の荷下ろし場近くにあったので黒いバルト海を見下ろしながら淡々と仕事をしておりました。

しかし前述のThe Museum of Occupationではエストニアの人達の反ソ連ぶりに衝撃を受けました。1939年にソ連に占領されその後1941年にはナチス・ドイツ軍が来る訳ですが、それがあたかも「解放軍」かの様に紹介されていたのが興味深かったです。やはりHISTORYは勝者によるHIS-STORY。一般的に歴史は善悪がはっきり線引きしてありますが、それは明らかに誰かに都合が良く書かれているか、あるいは話をなるべく簡単に把握出来る様に簡略化してあるだけなんですね。あとそうしないと歴史のテストで採点出来ないですからね〜

丁度タリン滞在中に緊急ニュースでイラクのフセイン(元)大統領に絞首刑の判決が下ったのを知りました。ホテルの窓から外を見ると美しい満月が黒いバルト海の上にぽっかりと浮かんでおりました。

「サダム君も今格子越しにこの月を見ているのだろうか」

月はどんな人の上にも同じ様に輝き、そして僕も貴方もフセインもブッシュも同じ様に見ているのです。

●北の国から - エピソード 2: フィンランド大統領 vs ファンキ−大統領

November 07, 2006

11月1日(水)

死ぬ前に絶対行きたい国や場所が自分の中で幾つかあります。まずは近場で万が一間違って結婚でもする事になったら絶対に新婚旅行で行きたいのが北朝鮮!人生最大の夢は金正日と一緒にカラオケに行ってキムに"My Way"を歌ってもらう事。そうなったら僕は"アナーキー・イン・ザ・N.K."でも歌います♪。
あとはサンクトペテルズブルグ(露西亜)、リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)、あとキューバなんかも良いですね〜。

そしてもう一つの場所は何を隠そう今回の旅で初めて訪れた街、ヘルシンキ!期待した以上に北欧的な「人生とは義務也」といわんばかりの痛ましい地上の人工楽園への憧憬とボルシェビキチックなコンクリートの無骨な建物が入り乱れた摩訶不思議な街です。

あと生まれて初めて「つらら」を目撃しました!

治安も良く、人達もシャイながら親切で基本的にピースなのに冷戦時代に東西の狭間にあった名残で町中いたるところに核シェルターがあったりホント面白い街です。太陽の光が弱いせいで建物の色のコントラストとかが妙に低いのですが、この荒涼とした感じは正にアキ・カウリスマキの世界。

ヘルシンキではドイツ人の友達が紹介してくれたイギリス人の友達のお宅に図々しくもお邪魔して楽しく過ごさせて頂きました。とっても素敵なカップルでデザイナーのMattはNokiaでロボットチックな携帯電話をデザインしていて(実際ジャパニメーションのファンらしく家中にフィギュアが飾ってあってトイレには量産型ザクが鎮座しております)アーティストのClareは名古屋で個展とかもやった事があるらしく結構来日回数も多かったりします。

ムーミン谷で再会したDon Johnson Big Band (http://www.donjohnsonbigband.com/) のラッパー、Tommyが水曜日にライブがあるから観に来る?と誘ってくれていたのですが、ヘルシンキに着いて唯一連絡先を知っているマネージャーがコペンハーゲンに行ってしまった事が発覚して「多分無理かな〜」と半分諦めかけていたのです。そうしたら当日Tommy本人から電話があってわざわざ彼女に迎えに来てくれるように頼んでくれたらしくまたまた人情に泪。そして夕方、僕が別の業界の人達とミーティングをしていた元工場の建物を改造した街の外れのオフィス・コンプレックスに小柄の可愛いTommyの彼女が雪の中車で迎えに来てくれました。

フィンランドのアルバム・チャートでは過去2枚のアルバムが共に#1でプラチナ・ディスクに輝いているDon Johnson Big Bandですが、それでも今回は初めての超大箱、アイス・ホッケー・アリーナ。それもその筈、この晩彼らの他にプレイするアーティストというのが他でもない「ソウル・ブラザー・ナンバー・ワン」、「ミスター・ダイナマイト」、「ファンキー大統領」ーーーー そう、あのJames Brownなのです!

まさかヘルシンキまできてJBを観る事になろうとは完全に想定外!やはり人生予定が狂ってなんぼです。

現地に着いて会場の前で彼女がTommyに電話をしている間、雪の中並んでいるもの凄い行列を眺めながらこのシュールな状況について漠然と考えていました。電話が終わった後彼女は幸いTommyの粋な計らいで二人はバックステージパス付きの関係者扱いだと教えてくれた後ニヤっとして「スクープよ!」

「何?」
「どうやらJames Brownは飛行機を2便も乗り遅れたみたい。だからTommy達は遅れを埋め合わせるのに予定の3倍位プレイしなくちゃならないんだって!」
「今JBはどこにいるの?」
「誰も知らないみたい」
「!!!」

さすがMr. Dynamite!目の前でそんな事はつゆとも知らず雪の中並んでいるファンを見ながら「どうなることやら....」と思いつつ会場へ。

まだ始まる迄時間があったので二人でバーへいって飲んでいると控え室からTommyがやってきて「今SPから”今夜は重要な人が来る”って言われたよ」
「それってどういう意味?」
「フィンランドの大統領が来るのさ。彼女はJames Brownの大ファンで有名だしこの前のコンサートでもステージに上がってたしね」
「でもJBはまだ何処にいるのかも分からないんだろ?」
「一応ついさっきフィンランドの大地に降り立った事だけは確認出来たみたいだよ。だからこの国のどこかにはいるんじゃない?じゃ、そろそろ本番だから行くね!」

凄い展開になってきました。とにかくなんだかんだでDon Johnson Big Bandのライヴがスタート。来日時のライヴよりミュージシャンの数も多く、James Brownが遅れているため1時間半かっちりセットをこなし結構いい感じでした。何はともあれ彼らにとっては「ひょうたんからこま」的ハプニング。Tommyもノッていたみたいだし今回初めて見るHuman Beat Boxの人(東京公演の時とは別の人)が「超人」を通り越して「変態」の域に達しているとしか言いようが無い凄いパフォーマンスを披露。目をつぶっていたら本当にドラムマシンを聴いていると思ってしまうぐらいでした(後から聞いたのですがこの彼まだHuman Beat Boxを始めてから2年も経ってないんだとか。やっぱり何でも「習うよりチャネろ」)。

ライヴの後は楽屋にいってワインをもらいメンバーの人達と御歓談。しばらくするとスタッフが「JBのライヴが始まるよ!」と言いに来てくれたのでステージの脇の関係者席へ行くとかの有名なMCによるイントロダクションが丁度始まるところ。そして引っぱりに引っ張ったところで御大James Brown登場!オン年73歳ながらセックス・マシーンを始め往年のヒット曲はほぼ網羅しエンターテインメントに徹したプロフェッショナルなステージを披露してくれました。お決まりのマイク・アクションからマッシュ・ポテト、タオルの演出全てお約束通りにやってくれて会場は興奮の坩堝に!とても飛行機2便も乗り遅れて空港から会場に直行してきたとは思えない余裕たっぷりかつノリノリのパフォーマンス。もう「宇宙人」としか言いようがありません。しかも会場にいたフィンランドのタルヤ・ハロネン大統領には"I got the feeling"を捧げたりしていました(笑)。

因にハロネン大統領は国民から『ムーミンママ』と呼ばれ7年近い間、80%以上の支持率を維持している女性大統領です。

最後にJBがIt's a man's, man's, man's, worldをバックに世界平和を訴えるという感動的なフィナーレで怒濤のライヴも終わり、、バックステージに行くと長い廊下の先にJBの後ろ姿が!感動醒めやらぬままTommy達の車に載せてもらって帰路に着いたのですが、JBの出番が遅れて結局終わったのが12時を過ぎてしまった為、最終電車に乗り遅れた人達が並ぶタクシーの行列が200メートルを超えていました。真夜中に雪の中いつ来るのか分からないタクシーを待って行列なんてホント惨いです。

JBのアホ!

因にTampereではフィンランド政府の閣僚(輸出大臣、この方も女性)と晩餐で同席したりとなんかフィンランドの政治家の人達と接見する機会が多かったです。Tommyもそうですが普通英国や日本でチャート#1のミュージシャンが2回くらいしか逢った事のない人に電話してきてくれて色々あそんでくれたり、首相がJBのコンサートにふらっと来たりなんてあまり考えられないですよね。上記の輸出大臣もSPとか全くいなかったし、人口が少ないせいもあるのでしょうがフィンランドでは所謂一般人とそうでない人の間にある見えない壁みたいなのが本当になくて(本来そんなのが幻想以外の何者でもないのですが)これは凄く良い感じ。あと印象的だったのは国会議事堂。普通に道路から入り口まで来られるし、夏は入り口の階段にみんな座ってビールとか飲んでるくらいユルくてチルなんだとか。個人的には警備厳重で有権者が近寄る事すら出来ない国会議事堂で運営される民主主義なんてそもそもおかしいと思うんですけどネ!

週の後半は連日業界関係の人達と逢ったりしてそのアポの合間をぬって美術館に行ったりしていました。

この後はサンクトペテルズブルグに行きたかったのですが、ビサの手続きが執拗に面倒臭いのと発行までに時間がかかりすぎる、更に旅行&滞在費用が予想以上に高そうだったので代わりにエストニアの首都タリンへ行く事にしました。幸いヘルシンキ - タリンの高速艇往復+ホテル4泊5日(朝食付)で175ユーロ (約26,292円)というかなりリーズナブルなパッケージを見つけたのでもう決まり!

やはり予定は狂ってなんぼ.....

そんな訳で「世界で最も中世の町並みが完璧に保存されている街」タリンに行って参りま〜す!

●北の国から エピソード1: ムーミン谷便り

10月24日(火)

出発前夜、「あと数時間で訪れた事の無い異国へと出発!」という緊張感を全く感じる余裕がないほど番組収録とかで忙殺されておりどうなることやらと思いましたが、気がつけば「ムーミン」の故郷、Tempereに着いておりました!

ヘルシンキに到着したのが夜の11時だったので、とってもらっていたホテルに直行し、翌日の朝に車で出発しました。高速に乗ってラジオをつけた途端ファースト・アルバム、セカンド・アルバム共にナンバー・ワンでプラチナ・ディスクというフィンランド・ナンバー・ワンのバンド、そして何を隠そう僕がディレクターをしているテレビ番組Music Tideでも取り上げた (!!!)Don Johnson Big Band(祝日本盤発売決定!)のしかも"Road"という選曲をされたが如きトラックがドロップされ、更に路上で敷かれたトナカイの屍体(これが本当の「赤鼻のトナカイ」?)を発見したりとかしたあたりから「ここはフィンランドなんだな」という実感がじわじわと湧いてきました。

Temperaはヘルシンキの北約150キロ。って事はもう殆ど北極圏ですよね。とにかく「寒っ!」という事で到着後最初に購入したアイテムは股引(モモヒキ)!

しかし泊まっているここは所謂ミニマルな北欧デザインでまとめられた超お洒落な(自分の金では多分一生泊まる事はなさそうな)高級ホテル"Hotel Ilves"。そこで世界中の音楽業界の人々が招待されて行われるフィンランド郷土品品評会Music & Media 2006 by Music Export Finland、略して"MUSEX"が行われました。初日でいきなりこの春LAで逢った世界中の業界人の殆どの人達と逢って一通り旧交を暖め「この世界は狭いな」というのを痛感。夜は街の数カ所で同時多発ライヴをチェック!いやいや、飲みまくりました〜

その後も前記した今年の5月に初来日して番組でも特集したDon Johnson Big Bandのメンバーとも感動的再会を果たし、とても業界の戦場とは思えない名古屋かもとい名護屋かもとい和やかな雰囲気で過ごした3日間でした。そこにいた殆どの人達が月曜には帰国、もしくは翌週に英国マンチェスターで行われる似たようなMusic Conferenceに出席すべくフィンランドを去って行きましたが、僕はしばらくヘルシンキに滞在するので多くのフィンランドの音楽業界の人達とヘルシンキで遊ぼう!と約束して別れました。

でもこうやって世界中のメディアやレーベルの人達を集めて自国のインディ系のアーティストを紹介するって凄くいいアイデアだと思うんですよね。日本ってこういう事やっていますか?御存知の方いらっしゃったら教えて下さい。日本人が思っている以上に世界中の業界の人達が今本当に日本のポップなネタを探しているのは今回も痛感しました。洋モノをマネしているような「カッコいい」クラブ系音楽とかJ-POPではなく、ARTコア and/or MANGA的キッチュなJ音楽のインフォメーションに皆様確実に飢えています。僕の知る限りではないような気がするので来年辺りに自分で企画してやろうかなって本気で思い始めています(協力者大歓迎)!

追伸: 何の因果か今日YouTubeでYMOのテクノポリスのPVを観たのですが、いやいや、あの方々のコンセプト・パッケージの完成度の高さは今更ながら脱帽です。ピチカート・ファイブなんて比じゃないですね。凄過ぎ!

ビバ・モミアゲレス・サウンド!